こんにちは。WordCamp Tokyo 2017実行委員会の高橋文樹です。
WordCamp Tokyo 2017には注目セッションがいくつもありますが、個人的には「世界で一人しかできない WordPress コアを写経する話 ― 修行の先に見たものとは?」をあげたいと思います。なぜそんなことをしたのか? いったいどんな知見が生まれるのか? 我々はどこからきてどこへ行くのか? そんな疑問が次々に湧いて来ます。
この変わり種のセッションを行うのは、大阪を中心にWordPressコミュニティでも精力的に活動し、WockerなどのOSSプロダクトの開発者でもあるカイトさん。本日はそんなカイトさんにセッションの魅力についてインタビューをしてみました。
——早速インタビューを始めましょう。宜しくお願いします。
カイト(以下K): お願いします。
カイトさんについて
——まずは、カイトさんについてお伺いします。カイトさんはものすごく多岐にわたって活動をしているイメージなのですが、ルーツというか、根っこになる部分はなんなのですか? デザイナー?
K: 大学のときにアパレル会社を起業して、ファッションのデザインをしたり、自社のサイトを構築したりしたのがルーツですかね。もっとルーツを辿れば子供のころから絵を描くのと数学が得意だったし、好きでしたね。
——なるほど。アパレルから入って、必然的にWebサイトを作るようになったわけですね。 その後、デジタルエージェンシーとして株式会社キテレツを立ち上げるわけですが、WordPressとの出会いはいつですか?
K: 広告代理店にいた時代で、WordPress 3.5 あたりだったと思います。
——ほお。2012年ぐらいですかね。その後、WordPressコミュニティに深く関わることになると思うのですが、はじめの印象はどうでしたか?
K: 当時 CMS に対する知識もあまりなかったので、便利なツールだなと。これがあればいろいろ作れるという印象でした。
——他のCMSなんかも使っていましたか?
K: Movable Type を使っていた案件がありましたね。
——日本だとMovable TypeかWordPressかという時期がありましたね。
K: そうですね。
——WordPressのコミュニティに関わるようになったのはどういうきっかけだったんでしょう。
K: これは今でもよく覚えているんですが、ひっしー (菱川) さんが勉強会に参加するツイートをしていたので質問したところ、WordBench だと教えてもらいました、その翌月の WordBench 大阪に参加したのがきっかけですね。
——はじめてのWordBenchはどうでしたか?
K: 面白かったですね。初回から懇親会まで参加しました。当時制作会社に在籍していて、社外の人と知り合う機会があまりなかったので、すごくいい集まりだと思いました。
出会いを増やそうと思い、その前に異業種交流会などに参加したりしましたが、保険とかマルチばっかりでうんざりしてたところでした(笑)
——たしかに、起業系のやつは胡散臭いのいっぱいありますからね。WordBenchはかなり健全かと。
K: うん、かなりおすすめです(笑)
——そうやって徐々にWordPressコミュニティに関わるようになったわけですが、コントリビューションはどうやって始めていきましたか?
K: WordBench 2回目の参加が Git の会でして、コマンドライングループのメンターをお願いされました。そうしたら WordBench 大阪のモデレーターにもなり……その後 WordCamp Kansai 2014 を知り、実行委員を申し出ましたが、額賀さんに「失恋.jp の話をしてください」ということになり、登壇することになりました。その間仕事で WordPress コアを読んでたらちょっとしたミスを見つけ、宮内さんに突撃しろと言われ、パッチを送ったところ WordPress 4.0 のコアコントリビューターになりました。
——サクセスストーリー!
K: 😄
セッションについて
——さて、それでは、そろそろ本題に入りましょう。
K: はい!
——今回のセッションは「世界で一人しかできないWordPressコアを写経する話 – 修行の先にみたものとは?」とありますが……まず、写経とはなんですか?
K: プログラミングの勉強でよくあるんですが、本とかに書いてあるコードをそのまま写して、自分で環境で同じ動きを再現する勉強方法です。
ただ、WordPress のソースコードは大量にあり、全部を一気に写すの無理で、少しずつ、さらに動きを確認できる方法でやる必要があります。
——ほお……しかし、なぜそれをコアでやろうと思ったのですか? 結構大変そうなんですけど……
K: コアコントリビューターになったのがきっかけですね。継続的にやりたいなと思い。またコアが実際なにをしてるのかを理解するため。さらに GitHub に push することによって、他の人にも見える毎日のルーティンを作るため。
——そのリポジトリのURL、教えてもらえますか?
K: これです。 https://github.com/ixkaito/wp-shakyo
——おー。ほんとに写経してしまっていますね。
K: はい(笑)
——若干の狂気を感じますw
K: 😱
——ちなみに、いまのところ一番手強いのはどこですか?
K: ソースコードですか?それとも写経全体でですか?
——写経全体ですね。
K: 迷子になり、何度かやりなおしたことと、コアの動きを見える化しようと思い、試行錯誤したことですかね。それは本番のセッションでも詳しくお話させていただこうと思っています。
——おお、それは楽しみですね。セッションはどんな人に来てもらいたいですか? 写経仲間というか。
K: それはいないんじゃないですか(笑)
——孤独な仕事ですね。
K: コミュニティに入りたての人とか、貢献はしたいけど何をしたらいいのかわからない人とか、WordPress をどうやって勉強したらいいのかわからない人とか
——なるほど。写経話は入門の参考になるわけですね。
K: そうですね。逆にギークな人にもおすすめかもしれない(笑) コアの見える化で苦労してますので、「こんなことしてるのか!」って驚いてもらえると思います。
——コアの見える化、パワーワード出ましたね。
K: 頑張れば自動化できると思うんですけどね(笑)
——そうですね。期待してます!
コントリビューションについて
——僕がカイトさんについて印象に残っているのは、WordCamp EUか何かでマットに質問していた動画なんですけど、あれはいつでしたかね。2015年?
K: 2015 だったと思います。WordCamp US ですね。
——たしか、「コアコミッターになるにはどうしたらいいか」みたいな質問だったと思うんですけど。
K: リリースリードですね。一つのバージョンで基本的に一人しかいません。
——いまのところ、日本人のコア・コミッターもまだ一人も出ていませんよね。まずはそこを目指している、ということであってますか?
K: どうなんでしょうね(笑)なれたらもちろんうれしいんですが、それになると相当なことと引き換えにしないといけないことになるので、それが可能かどうかですね。ただ、コントリビューターはこれからも続けるつもりです。
——僕個人としては、ぜひWordPress管理画面でカイトさんのGravatarを見たいと思います。
K: それは僕もテンション上がります!
——海外のWordCampに行くと、アジア圏の人たちが明確に「まだアジアのリリースリードは一人も出ていないから、最初のリリースリードに俺はなる!」って言ったりするんですよね。
K: へー、すごいですね。しかし現実的に、みんなお金を稼がないといけないんですよね。海外はコアコミッターに会社が給料を払いながら貢献させてるところが多いので、そういう体制がアジアではまだ整ってないのかも。
——それはありますね。そこらへんの現実的な話は、ぜひ海外ゲストたちに聞いてみたいですね。
K: たしかに。
おすすめセッション
——ちなみに、カイトさんが楽しみにしているセッションはありますか?
K: 「ダイエット記事から考える 情報発信をする上で知っておきたい科学的根拠のこと」 WordPress に限ったことではありませんが、これはやっぱりおもしろそうですね。
——Welq問題を最初に取り上げた朽木誠一郎さんのセッションですね。
K: 「Gutenberg が切り開くWordPress の新UX」 WordPress の新しい大きな動きなので、WordCamp Kyoto 2017 での僕のセッションでも取り上げましたが、これも興味ありますね。
——なるほど。WordPressに深く関わるカイトさんのおすすめセッションなら間違いなしですね!
K: ありがとうございます(笑)しかしどれもおもしろそうです。
——もちろん、写経セッションもみなさんにぜひ聞いてほしいです。たぶん、カイトさんならではのインテリジェントなネタが盛りだくさんなのでは?
K: 少なくとも他の人では話せない経験はあると思います。役に立つかどうか参加者次第かもしれませんが(笑)
——いやあ、そこは「役に立つ」と言い切りましょう!
K: ああ! 説明文で書いてありました。誰にでも役に立つはず! と。
——写経は役に立つ! これが今日の結論ですね。
K: 「どう役に立てるかどうか」ですね
——人の数だけ写経がある、と。
K: きっとそうです。
——では、参加された皆さんそれぞれにコア写経の意味を見つけていただきたいですね。 それでは最後に、読者のみなさんにWordCampのオススメポイントを一言いただけますか?
K: WordCampや WordPress コミュニティはきっとあなたに刺激を与えると思います。
——たしかに、カイトさんがある意味で写経するレベルまで変わっていったのは、WordCampのようなコミュニティでの出会いだったり、オフラインでの出来事などが刺激になったように思います。なので、みなさんにもそういうものを見つけてもらいたいですね!
K: そうですね。ほんとうに大きな影響を受けました。こうしていろんな仕事をさせていただいてるのもこうした出来事があってこそです。
——「仕事も増える」、これ重要ですね。
K: 重要ですね(笑)
——それでは、本日は長々とありがとうございました。
K: ありがとうございました!
以上、謎めいた「コアの写経」についてセッションを行うカイトさんの素顔に迫ってみました。コミュニティをきっかけにWordPressに深く関わるようになったロールモデルの一つとしても、初心者の方からギークまで楽しめる内容になっていること請け合いです。
他にも楽しいセッションが沢山あるので、タイムテーブルをチェックしましょう!